【日経225】IBS(インターナル・バー・ストレングス)を使った平均回帰戦略

インジケーターを一切使わず、その日の「4本値」だけで計算できる、シンプルでユニークな指標があります。IBS(Internal Bar Strength)です。

当サイトでは繰り返し、感覚的なチャート分析ではなく、統計的な裏付けのある手法を重視してきました。このIBSは、計算がごく単純でありながら、株価指数の平均回帰(行き過ぎた価格が元に戻る動き)と非常に相性が良く、長年にわたって機能してきたことで知られています。

この記事では、日経225を対象に、IBSを使った平均回帰戦略をゼロから組み立てます。基本戦略の定義から、最適化、そして当サイトの基礎的な堅牢性テスト(アウトオブサンプル・マルチマーケット・What if)まで、順を追って検証していきます。

目次

IBS(インターナル・バー・ストレングス)とは

IBSは、その日の終値が「その日の値幅(高値から安値まで)のどのあたりに位置するか」を、0から1の数値で表す指標です。計算式は次のとおりです。

IBS =(終値 − 安値)÷(高値 − 安値)

【図】IBSとは?計算例と概要の説明

数値の意味はシンプルです。IBSが0に近いほど、終値がその日の安値近くで引けた(=売られて終わった)ことを示します。逆に1に近いほど、終値が高値近くで引けた(=買われて終わった)ことを示します。

平均回帰の発想では、これをこう使います。IBSが極端に低い(安値近くで引けた)ときは「売られ過ぎ」と見て、買い。その後、価格が平均に戻る動きを狙う。指標はこれひとつ、必要なのは4本値だけ。移動平均もオシレーターもいりません。

なお、今回の検証では、IBSを「前日の4本値」で計算しています(StrategyQuantXでの記述は (Close[1] − Low[1]) / (High[1] − Low[1]) )。当日の終値を待たずに、確定した前日のバーで判断してエントリーする形です。

【画像挿入位置①】IBSのイメージ(安値引け=IBS低い/高値引け=IBS高い)

基礎戦略の定義

戦略を作るときは、いきなり売買ルールを決めるのではなく、まず「なぜこの銘柄で、なぜこの戦略タイプなのか」という土台から考えます。当サイトでは、この土台を2つの視点で整理しています。銘柄そのものの優位性(マーケットエッジ)と、勝ち方の型の優位性(戦略エッジ)です。IBSを使った日経225の戦略が、なぜ成り立つのかを、この2つの視点から見ていきます。

なぜ日経225か(マーケットエッジ)

日経225をはじめとする主要な株価指数は、長期的に上昇するバイアスを持っています。だからこそ、下落は一時的なものに終わり、価格が戻りやすい。これが平均回帰戦略の土台になります。これは、銘柄そのものが持つ優位性に着目する「マーケットエッジ」の考え方です(詳しくは戦略構築ガイド:銘柄の優位性を見極める(マーケットエッジ)を参照)。

なぜ平均回帰か(戦略エッジ)

株価指数は、急落した後に買い戻される「行き過ぎの修正」が起きやすい性質があります。IBSは、この「行き過ぎ(売られ過ぎ)」を数値でとらえるのに向いています。売られて安値近くで引けた日の翌日以降に、反発を取りにいく。これがIBSと株価指数の相性の良さです。これは、どう仕掛けるかという戦略の型に着目する「戦略エッジ(ストラクチャーエッジ)」にあたります(詳しくは戦略構築ガイド:勝ち方の型を決める(ストラクチャーエッジ)を参照)。

エントリーとイグジット

方向は買いのみとします(日経の長期上昇バイアスと一致させるため)。まずは、細かく作り込まず、ごくシンプルな設定から始めます。

  • エントリー:IBSが0.2未満になったら買い
  • イグジット:IBSが0.8を超えたら決済

「売られ過ぎ(0.2未満)で買い、買われ過ぎ(0.8超)で手放す」という、平均回帰そのものの単純なルールです。0.2と0.8という値も、まずは直感的に置いただけの出発点です。

シミュレーションと結果

検証条件は、当サイトの全戦略で統一しています。

  • 銘柄:日経225 / タイムフレーム:日足
  • 検証期間:2011年9月19日 〜 2021年12月31日(この期間を戦略の開発に使用)
  • スプレッド:なし / スワップ:なし / 手数料:一律0.05%
  • 初期資金:10,000ドル / 取引サイズ:1(固定ロット)
  • 取引条件:エントリーIBS 0.2未満、決済IBS 0.8以上
STEP
銘柄・タイムフレーム・期間の設定画面
STEP
初期資金・取引サイズの設定画面
STEP
手数料・スワップの設定画面
STEP
取引条件の設定画面(エントリー / 決済)

この条件でバックテストを行いました。

【図】IBS(0.2 / 0.8)のバックテスト結果と資産曲線
指標IBS(0.2 / 0.8)
プロフィットファクター1.53
リターン/ドローダウンレシオ3.73
勝率68.85%
取引数260

注目してほしいのは、適当に置いただけの閾値でも、すでに優位性が確認できることです。10年で260取引、プロフィットファクター1.53。4本値だけのシンプルなルールで、この時点でプラスの期待値が出ています。IBSという指標が、株価指数の平均回帰をうまくとらえている証拠です。

ただ、この数値は直感で置いただけなので、ここから最適化して、より安定した閾値を探します。これが戦略づくりの基本の流れです。

最適化

エントリーとイグジットの閾値を最適化しました。エントリーは0.1〜0.45、イグジットは0.55〜0.95を、それぞれ0.05刻みで振り、全72通りを検証しました。

【図】最適化の設定画面(エントリー・イグジットの範囲と刻み)
【図】最適化結果(Top view・利益の分布)

ここで大切なのは、最も数字が良かった1点に飛びつかないことです(詳しくは戦略構築ガイド:最適化とカーブフィッティングの回避を参照)。最適化結果の分布を見ると、利益が出やすい「安定した領域」があります。その中央付近にあたる、エントリー0.2 / イグジット0.9を採用しました。最初の設定から変わったのはイグジットの0.8→0.9だけですが、これは端の突出した値ではなく、周囲のマスも良好な安定領域の中から選んだものです。極端な1点ではなく、面で良い場所を選ぶ。これがカーブフィッティングを避ける考え方です。

フィルターの追加

基本戦略のままでも優位性はありますが、当サイトの堅牢性テストをすべて通過する、より頑健な戦略に仕上げるため、フィルターを一つ追加しました。StrategyQuantXで検証を重ねた結果、有効だったのはストキャスティクスによるフィルターです。

ストキャスティクスは、一定期間の値幅の中で、現在の価格がどのあたりに位置するかを見るオシレーターです。今回は「ファストの%Kが、スローの%Dを下回っている」ときだけエントリーする、という条件を追加しました。かみ砕くと、「短期的な勢いが下向きに傾いている(=まだ売られている最中)」という状況に絞って買う、ということです。IBSの「売られ過ぎ」に、ストキャスティクスの「下向きの勢い」を重ねることで、反発をより取りやすいタイミングに厳選します。

設定したパラメータは次のとおりです(画像は英語表記のため、対応を添えます)。

  • %K Period(%K期間):61
  • %D Period(%D期間):7
  • Slowing(平滑化):7
  • MA Method(移動平均の種類):Linear weighted(線形加重)
  • Price Field(計算に使う価格):Low/High(安値・高値)
  • Shift(ずらし):1(前日の値で判定)
【図】ストキャスティクスのパラメータ設定画面

これらの値も、恣意的に決めたものではなく、検証を通じて安定して機能する組み合わせを採用しています。ストキャスティクスの条件を加えることで、エントリーを厳選し、勝率とプロフィットファクターがさらに改善しました。フィルター追加後の、開発期間(2011年9月〜2021年12月)での結果は次のとおりです。

【図】フィルター追加後の開発期間の結果と資産曲線
指標基本戦略フィルター追加後
プロフィットファクター1.532.86
リターン/ドローダウンレシオ43.737.73
勝率68.85%74.55%
取引数260110

フィルターにより取引数は絞られましたが、プロフィットファクター・勝率・リターン/ドローダウンレシオのいずれも大きく改善しています。取引を厳選することで、質が上がったことがわかります。

基礎の堅牢性テスト

ここからが、当サイトが最も重視する部分です。最適化して良い数字が出ただけでは、その戦略が「たまたま過去に合っていた」だけかもしれません。本当に使えるかを確かめるため、フィルター追加後の戦略を、3つの基礎テストにかけます。

アウトオブサンプルテスト

戦略の開発に一切使っていない期間(2022年1月〜2026年8月)で、同じ戦略をそのまま検証します。

【図】アウトオブサンプルの結果
指標開発期間(〜2021年)未知の期間(2022年〜)
プロフィットファクター2.863.24
リターン/ドローダウンレシオ7.736.47
勝率74.55%69.23%
取引数11065

アウトオブサンプルテストで大切なのは、「未知の期間でものすごく儲かること」ではなく、「開発期間と近しい結果が得られること」です。この戦略は、プロフィットファクターが2.86→3.24、勝率が74.55%→69.23%と、開発期間と近い水準を保っています。未知の期間でも、性質が大きく崩れていない。これは望ましい結果です。

マルチマーケット分析

同じ戦略を、日経225以外の株価指数(S&P500、Nasdaq)にも当てはめ、通用するかを確認します。特定の銘柄にだけ都合よく合っている戦略ではないか、を見るテストです。クリアの基準は、プロフィットファクターが1を超えることとしています。

【図】マルチマーケットテスト:S&P500の結果
【図】マルチマーケットテスト:Nasdaqの結果
銘柄プロフィットファクターリターン/DD勝率取引数
S&P5001.946.970.06%177
Nasdaq2.256.3273.6%178

どちらもプロフィットファクター1を大きく超え、通過しました。IBSの平均回帰が、日経225だけでなく、他の主要株価指数にも共通して効いていることを示しています。これは「株価指数の性質そのもの」をとらえている証拠であり、戦略の頑健さを裏付けます。

What if 分析

結果が、ごく一部の幸運な取引に支えられていないかを確認します。ここでは、利益の大きい上位5%の取引を削除し、さらに取引履歴を1つ飛ばしにする、という厳しい条件を課しました。クリアの基準は、それでもプロフィットファクターが1を超えることとしています。

【図】What if 分析の結果
指標What if(上位5%削除+間引き後)
プロフィットファクター1.69
リターン/ドローダウンレシオ3.8
取引数83

大勝ちした取引を取り除き、取引を間引いてもなお、プロフィットファクター1.69を維持しました。この戦略の優位性が、少数の幸運な取引ではなく、多数の取引に分散して存在していることがわかります。

弱点・注意点

すべてのテストを通過しましたが、この戦略にも弱点があります。正直にお伝えします。

第一に、取引回数が少ないことです。開発期間10年でフィルター後110取引、全期間15年でも175取引と、年に十数回ほどのペースです。取引が少ないぶん、一回一回の結果が全体に与える影響が大きく、また「エントリーの機会をじっくり待つ」戦略なので、単体で運用すると資金効率の面では物足りなく感じるかもしれません。他の戦略と組み合わせて使うことを前提にするのが現実的です。

第二に、相場状況によっては、保有期間が長くなることです。この戦略は、IBSが0.9を超えるまで決済しません。つまり「終値が、その日の高値のかなり近くで引ける」日が来るまで、ポジションを持ち続けます。通常はすぐに条件を満たしますが、そうした日がなかなか来ない相場では、保有が長引きます。実際、今回の検証でも、33日間保有し続けた取引が2件ありました。長く持つあいだ資金が拘束されるうえ、その間の相場変動リスクも負うことになります。決済条件を厳しくしている(0.9超)ことの裏返しの弱点です。

第三に、これらの結果は過去のデータにもとづくものであり、将来の成果を保証するものではありません。市場の構造が変われば、通用しなくなる可能性は常にあります。だからこそ、当サイトでは公開後の成績も追跡し続けています。

まとめ

IBSは、4本値だけで計算できる、極めてシンプルな指標です。それでいて、株価指数の平均回帰と相性が良く、今回の日経225でも、基本戦略の時点で確かな優位性が確認できました。

さらにストキャスティクスのフィルターを加え、当サイトの基礎的な堅牢性テスト(アウトオブサンプル・マルチマーケット・What if)をすべて通過する戦略に仕上げました。開発期間と未知の期間で近い成績を保ち、他の株価指数でも機能し、大勝ちを除いても優位性が残る。シンプルながら、頑健な戦略です。

インジケーターに頼らず、統計的な偏りに淡々と乗る。そして必ず検証する。それが、当サイトの一貫した戦略づくりの姿勢です。

この戦略の、公開後の実績について

当サイトでは、公開した戦略が「その後も実際に機能し続けているか」を、隠さず記録しています。この戦略も、公開日以降の成績を毎月追跡しています。バックテストの数字だけでなく、公開後の推移もあわせてご確認ください。

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