戦略的エッジとは?──順張りと逆張りの相性を検証する

前回の記事「マーケットエッジとは何か?──戦略構築の第一歩」では、2010年〜2024年の15年間・47銘柄を対象に、
各マーケットにおいて「買い」または「売り」のどちらに優位性(エッジ)があるか、そしてその強さがどれほどかを比較検証しました。

本記事では、そのマーケットエッジをさらに掘り下げ、順張りと逆張りという2つの戦略ロジックが、実際にどのマーケットで機能しやすいのか──つまり「戦略的エッジ」がどこにあるのかを明らかにします。
まずはS&P500を題材に、シンプルなロジックで詳細な検証を行い、その後、他のアセットとの比較へと展開します。

トレーディング戦略の分類と本記事の焦点

トレーディング戦略は、大きく以下の3つに分類されます。

  • 順張り(ブレイクアウト、トレンドフォロー)
  • 逆張り(平均回帰)
  • パターン戦略(時間帯・形状・イベントなど)

本記事では、順張りと逆張りの2つに絞って検証します。
パターン戦略はロジックの性質が異なるため、別記事で詳しく解説します。

目次

順張りと逆張り──その違いと考え方

  • 順張り(Break Out & Trend Following)
    価格が上昇しているときに買い、下落しているときに売る。トレンドの継続を前提とした戦略です。
    ※本記事では、トレンドフォローも含めて「順張り」と定義します。
  • 逆張り(Mean Reversion)
    一時的な価格の行き過ぎを狙って、反転を期待してエントリーする戦略です。
    価格が下がりすぎたときに買い、上がりすぎたときに売るという考え方です。

QuantpleTradingでは、これらのロジックがマーケットごとにどの程度機能するか=戦略的エッジ(Strategic Edge)として定義しています。

S&P500に適した戦略を検証

まずは、前回も取り上げたS&P500を対象に、順張りと逆張りのロジックを比較検証します。
検証には、2010年〜2024年の15年間の日足データを使用しました。

検証ロジック(買いエントリーのみ)

順張り(ブレイクアウト)ロジック

  • ポジション未保有
  • 2本前の高値より、1本前の終値が高い
  • ランダム条件(50%の確率)でエントリー
  • 2〜5本後にランダム決済
ブレイクアウトのランダムロジック

逆張り(平均回帰)ロジック

  • ポジション未保有
  • 2本前の安値より、1本前の終値が低い
  • ランダム条件(50%の確率)でエントリー
  • 2〜5本後にランダム決済
ミーンリバージョンのランダムロジック

このロジックは、裁量判断を排除し、構造的な傾向を抽出するためのシンプルな仕組みです。

検証結果:S&P500は逆張りに戦略的エッジあり

検証の結果、S&P500では逆張りロジックのほうが順張りよりも高い平均リターンと安定性を示しました。

1回のシミュレーション(資産曲線)

まず、順張り・逆張りそれぞれについて、1回のシミュレーションによる資産曲線を比較しました。
この結果は、単発のシミュレーションではどのような値動きを描くかを視覚的に把握するためのものです。

順張り:BreakOut(ブレイクアウト)

Source:yfinance

逆張り:MeanReversion(平均回帰)

Source:yfinance

1,000回のシミュレーション(統計的検証)

次に、同じシミュレーションを1,000回繰り返し、平均リターンと成功率(最終リターンがプラスになる確率)を比較しました。

順張り:BreakOut(ブレイクアウト)

Source:yfinance
  • 平均リターン:4.0568%
  • 最終リターンが0%を超えた回数:966回 / 1,000回

逆張り:MeanReversion(平均回帰)

Source:yfinance
  • 平均リターン:6.8874%
  • 最終リターンが0%を超えた回数:999回 / 1,000回

この結果から、逆張りロジックはリターンの水準だけでなく、安定性(成功率)においても順張りを上回ることが分かります。
特に、1,000回中999回がプラスで終わるという結果は、構造的な優位性=戦略的エッジがあることを強く示唆しています。

よって、S&P500のマーケットでトレーディングを行う場合は、逆張りの買い戦略を適用することが最も効果的であると言えます。

他アセットへの拡張:47銘柄の戦略的エッジ比較

S&P500の検証結果を踏まえ、他の46銘柄についても同様のロジックで検証を行いました。
すべての検証は「買いエントリーのみ」で統一し、順張りと逆張りそれぞれの戦略的エッジ(平均リターン)を比較しています。

表の見方

以下の表は、各銘柄における「順張りロジック」と「逆張りロジック」の平均リターンを並べたものです。
また、カテゴリ欄ではその銘柄が属する市場(株価指数・暗号資産・通貨ペアなど)を示しています。

順張りリターンが高い銘柄は、トレンドに乗る戦略が有利である可能性が高く、逆張りリターンが高い銘柄は、反転を狙う戦略が機能しやすい傾向があります

このように、順張りと逆張りのどちらがその銘柄に適しているかを一目で判断できる構成になっています。

銘柄平均年率リターン(順張り)平均年率リターン(逆張り)カテゴリー
SOL/USD60.77%38.33%Crypt
BNB/USD49.55%17.45%Crypt
XRP/USD27.17%4.36%Crypt
ETH/USD25.45%2.83%Crypt
BTC/USD21.36%2.95%Crypt
NASDAQ2.86%6.09%株価指数
S&P5002.30%4.17%株価指数
Russel20001.52%3.35%株価指数
NIKKEI2250.72%2.99%株価指数
SENSEX303.46%2.26%株価指数
DAX2.12%2.20%株価指数
DOW301.45%2.10%株価指数
AUX2000.68%1.61%株価指数
CAC400.56%1.39%株価指数
EURSTOXX50-1.04%1.19%株価指数
FTSE100-0.45%0.84%株価指数
CHFJPY0.68%0.43%FX
USD/JPY0.99%0.16%FX
GBP/JPY0.58%0.64%FX
NZD/JPY0.21%-0.09%FX
EUR/JPY0.96%0.85%FX
CAD/JPY0.21%-0.18%FX
AUD/JPY0.93%-0.32%FX
EUR/GBP-0.12%0.43%FX
AUD/NZD-0.56%-0.04%FX
USD/CHF0.47%-0.35%FX
GBP/USD-1.33%0.21%FX
NZD/USD-0.45%0.19%FX
EUR/USD-0.18%-0.83%FX
CAD/USD-1.07%-0.34%FX
AUD/USD0.25%0.15%FX
VIX-14.69%23.25%FX
COCOA1.48%2.14%コモディティ
COFFEE1.61%-0.26%コモディティ
GOLD1.26%1.87%コモディティ
SILVER0.56%2.22%コモディティ
COPPER-0.39%2.05%コモディティ
CORN-2.49%3.71%コモディティ
COTTON0.61%-1.66%コモディティ
WHEAT-1.85%4.06%コモディティ
SOYBEANS-1.24%-0.61%コモディティ
SUGAR-1.92%0.31%コモディティ
Natural Gas-9.32%3.44%コモディティ
Platinum-0.44%-2.91%コモディティ
WTI(外れ値あり)1.99%-43.71%コモディティ
US5Y-1.71%8.98%債券
US10Y-0.28%3.00%債券

※本ランキングは、原則として2010年〜2024年の15年間のデータを対象としていますが、暗号資産など一部のアセットは上場時期の関係で期間が短くなっています。また、その他のアセットでも、データの取得可能期間により若干の差異があります。

すでにトレードをしている方は、ご自身が扱っている銘柄と、採用している戦略との相性を確認することで、戦略の見直しや強化に役立てることができます。これからトレードを始める方は、どのマーケットが優位性が高く勝ちやすいのか銘柄を選ぶヒントとして活用できます。

分析結果から見えるカテゴリ別の傾向

47銘柄の検証結果から、マーケットの種類によって戦略的エッジの傾向が大きく異なることが明らかになりました。

  • 暗号資産(Crypto)
    調査対象のすべての銘柄において、順張りのリターンが逆張りを上回る結果となりました。
    これは、暗号資産が高い慣性を持ち、トレンドが継続しやすいマーケットであることを示しています。
  • 株価指数(Index)
    調査対象のほぼすべての銘柄で、逆張りのリターンが順張りを上回る結果となりました。
    一見トレンド型に見える株価指数ですが、順張りよりも逆張りが機能しやすい構造を持っています。
  • コモディティ(Commodity)
    銘柄ごとに傾向が異なり、順張りが有利なものもあれば、逆張りが有利なものもあるなど、統一性がありません。
    そのため、個別の検証が特に重要なカテゴリです。
  • FX(通貨ペア)
    順張り・逆張りのいずれを用いても、平均リターンが低く、安定性も乏しい傾向が見られました。
    多くのトレーダーが「親しみやすさ」や「情報の多さ」からFXを選びがちですが、実際には最も利益を得るのが難しいマーケットである可能性があります。

このように、マーケットの種類によって戦略の相性が大きく異なるため、銘柄選びと戦略設計はセットで考えるべきです。

結論:戦略的エッジを知ることで、戦略構築が変わる

前回の記事「マーケットエッジとは何か?──戦略構築の第一歩」では、各マーケットにおいて「買い」または「売り」のどちらに優位性があるかを検証しました。そして本記事では、順張りと逆張りという2つの戦略ロジックが、どのマーケットで機能しやすいか──つまり「戦略的エッジ」を明らかにしました。

この2つの視点を組み合わせることで、トレーダーは「どの銘柄に、どの戦略を使うべきか」といった問いに対して、感覚ではなく検証に基づいた判断が可能になります。「勝ちやすいマーケットで勝ちやすい戦略を利用する」これこそ、最も再現性が高いトレーディングロジックと言えるのではないでしょうか。

次回の記事では、これまでのエッジを生かしたシンプルなロジックを実際に作成し、シミュレーションを行います。またローソク足の期間(例:日足・4時間足・1時間足など)が戦略のパフォーマンスにどう影響するかを検証します。

次の記事を読む:構造的エッジを生かした戦略設計とは?

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