効果的な最適化の方法と手順──安定領域を理解する

前回の記事「シンプルな戦略を構築する──RSIを使った逆張りロジックと時間軸の検証」では、構造的エッジをベースにしたシンプルなロジックを長期足に適用することで、収益性と再現性の高い戦略が構築できることを紹介しました。

今回はその戦略をさらにレベルアップさせるために、「最適化」と「リスク管理」の視点を加えます。
ただし、最適化には落とし穴もあります。この記事では、最適化の基本から注意点、そして安定した戦略を作るための実践的な手順までを解説します。


目次

最適化とは

最適化とは、戦略のパラメータ(変数)を調整し、より良いパフォーマンスを得るためのプロセスです。
一般的には、あるパラメータに対して「開始値」「終了値」「ステップ数」を設定し、すべての組み合わせを試すことで、最も利益が出る条件を探します。

たとえば、RSIの買いレベルを「5〜45」、売りレベルを「55〜95」で5刻みとすれば、合計81通りの組み合わせが生まれます。

最適化のイメージ図

このような網羅的な検証によって、各パラメータの組み合わせにおける戦略のパフォーマンスを評価することができます。


最適化の落とし穴

最適化には注意すべきポイントがあります。
多くの人がやってしまうのが、過去データおいて最高のパフォーマンスとなるパラメータを見つけようとする、そしてシミュレーション結果で最も利益が出たパラメータをそのまま採用してしまうことです。
しかし、それは「カーブフィッティング(過剰最適化)」の典型例です。

カーブフィッティングとは、過去のデータに戦略を“合わせすぎる”ことで、将来のマーケットでは機能しなくなる現象です。
実際に、最適化された期間では美しい資産曲線を描いていた戦略が、未検証の期間ではまったく利益が出ない──というケースは珍しくありません。

カーブフィッティングの資産曲線の例
カーブフィッティングの資産曲線の例

もう一つの落とし穴は、最適化するパラメータの数が多すぎることです。
パラメータが増えるほど、枝分かれ図のような組み合わせが指数関数的に増え、カーブフィッティングのリスクも高まります。
そして、マーケットが過去と少しでも違う動きをすると、戦略はすぐに期待外れのものになってしまうのです。


安定領域を見つける

では、どうすればカーブフィッティングを避けられるのでしょうか?
答えは「安定領域」を見つけることです。

最適化とは、過去のマーケットで“最も良い”パラメータを探す作業ではなく、多少ズレても安定して利益が出る領域を探す作業です。
この安定領域の中心に近いパラメータを選ぶことで、将来のマーケットが過去と多少異なっても、戦略が機能し続ける可能性が高まります。


実例:S&P500のRSI逆張り戦略

前回の記事で構築した基本戦略は、以下の通りです。

  • 売買方向:買いのみ
  • RSI買いレベル:30以下
  • RSI売りレベル:70以上
  • RSI期間:2
  • シフト:1

今回もシミュレーションには「StrategyQuantX」というツールを使用していきます。買いレベルを「5〜45」、売りレベルを「55〜95」でステップ5ずつ動かし、合計81通りの組み合わせを検証しました。

全ての結果を利益が多い順に並べ替え、一番上のパラメータが最も利益が出た数値の組み合わせです。今回は「買いレベル40」「売りレベル95」でした。

利益の多い順に並べかえ

しかし、ここでそのまま採用してしまうとカーブフィッティングの要因になりえます。そこで、この最適化(組み合わせ)から確認できる安定領域を見つけます。以下の画像は、最適化の結果を視覚化して見やすくしたもので、濃い緑色になるほど利益が高く、濃い赤色になるほど利益が少ない組み合わせがわかります。

緑色が多い区間は買いエントリーレベルが25~45、売り決済レベルが75~95であることがわかります。これが安定領域です。そして、実際に選ぶべきは赤い点で記した「買いレベル35」「売りレベル85」です。
なぜなら、この組み合わせは利益が高いゾーン(緑色)の“中心”に位置しており、多少パラメータがズレても安定して利益が出る領域だからです。


リスク管理の視点を加える

ここまでで戦略の最適化は進みましたが、リスク管理の視点が欠けていると、思わぬ損失を被る可能性があります

今回のシミュレーションにおいて、1か月以上ポジションを保有する取引がいくつもあり、中には保有期間が100日を超えるケースもありました。

その間、ポジションはマーケットにさらされ続け、保有期間が長くなるほど利益と損失のブレ幅が大きくなる傾向も確認されています。

この問題を解決するために、シンプルな決済ロジックを追加します。
具体的には、RSIの決済条件に達していなくても、エントリー後にローソク足10本(=最大10日間)経過した時点で強制決済するというルールです。


決済ロジック追加後の最適化

この新しい決済ルールを加えたうえで、再度最適化を実施しました。
今回は、もともと安定領域だった「買いレベル25〜45」「売りレベル75〜95」を5ステップで検証。

この最適化による安定領域を確認します。

良好なパフォーマンス、安定領域を示したのは、

  • 買いレベル:40または45
  • 売りレベル:90または95

リスクに焦点を当てて、変更前後の結果を比較します。変更後のシミュレーション結果は買いレベル40、売りレベル90のパラメータの戦略です。

決済ロジック追加前:RSIのみ
決済ロジック追加後:RSI + ローソク足本数10
  • ドローダウン(※ドローダウンとは、資産曲線がピークからどれだけ下落したかを示す指標で、リスク管理の重要な目安)は約155%から約115%に縮小
  • 最大損失は▲36,995ドルから▲25,350ドルに減少
  • 平均保有期間も8.38日から7.63日へと縮小

このように、保有期間の制限を加えるだけで、戦略のリスクプロファイルは大きく改善し、結果的にトータルの利益も大きく上回っています。


パラメータが多いと安定領域は見えなくなる

今回の検証では、最適化したのは「買いレベル」と「売りレベル」の2項目だけでした。
だからこそ、安定領域を視覚的に確認することができました。

しかし、これが4項目、5項目、6項目と増えていくと、組み合わせは膨大になり、安定領域を見つけることはほぼ不可能になります。
複雑な戦略ほど、カーブフィッティングの罠に陥りやすく、将来のマーケットに対応できなくなるのです。

だからこそ、シンプルな戦略 × 安定領域の中心パラメータ × シンプルなリスク管理という組み合わせが、長期的に機能する堅牢な戦略を構築するための鍵となります。


結論:安定領域をベースに堅牢な戦略を構築する

最適化とは、過去のマーケットで最も利益が出たパラメータを探す作業ではありません。将来のマーケットが多少変化しても、安定して機能する“領域”を見つけることこそが本質です。

さらに、リスク管理の視点を加えることで、戦略の信頼性と実運用の安全性が大きく向上します。今回の検証では、保有期間の制限を加えることで、最大損失とドローダウンが明確に改善されました。

次回は、この戦略にフィルターを追加して最終調整を行います。
そして最後の記事では、今回構築した戦略を2024年〜2025年の最新データでテストし、本当に機能するのかをご自身の目で確認していただきます。

ぜひ最後までお付き合いください。

→ 次の記事を読む:フィルターを追加して構築した戦略を仕上げる


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