トレード戦略を構築するうえで、最初に理解すべき概念が「マーケットエッジ」です。これは、ある金融商品において、特定の方向(買い/売り)に統計的な優位性が存在する状態を指します。
マーケットエッジはすべての銘柄に存在するわけではない
株式、FX、コモディティ、暗号資産など、金融商品は多岐にわたりますが、すべてにマーケットエッジがあるわけではありません。さらに、エッジの「強さ」も商品によって異なります。
たとえば、米国株指数(S&P500)は長期的に右肩上がりの傾向があり、買いに優位性があるとされています。一方、FXの多くの通貨ペアはレンジ相場が多く、方向性のエッジは弱い傾向があります。
ここで重要なのは、ファンダメンタル要因(企業の成長、金利、インフレなど)を考慮する必要はないということです。QuantpleTradingでは、過去の価格の傾向=統計的な事実に基づいて戦略を構築することを重視しています。
S&P500は「買いにエッジがある」代表例
以下の長期チャートをご覧ください(※画像挿入)。
S&P500は過去10年間で、年間ベースで7勝3敗、平均騰落率は+11%という安定した上昇傾向を示しています。
陽線(上昇した日)の数と陰線(下落した日)の数を比較すると、陽線の方が明らかに多く、買い方向に統計的な偏りがあることがわかります。
このような傾向は、ファンダメンタル分析ではなく、過去の価格データから導き出されるマーケットの性質です。
ロングとショートを同じロジックで使ってはいけない
マーケットに「買いのエッジ」がある場合、ロング戦略とショート戦略を同じロジックで運用するのは非合理的です。
たとえば、順張りロジックが買いで機能するからといって、売りでも同じように機能するとは限りません。むしろ、逆方向ではエッジが消失するか、逆効果になる可能性すらあります。
マーケットの性質に合わせて、戦略の方向性を限定することが、再現性のあるトレーディングの第一歩です。
ランダムエントリーでも「買いが有利」なケース
筆者が行ったシミュレーションでは、S&P500に対してランダムなタイミングで買いエントリーを行い、2〜5本後に決済するという単純なロジックでも、統計的にプラスのリターンが得られる傾向が確認されました。
これは、マーケットそのものに「買いのエッジ」が存在していることを示唆しています。
つまり、ロジックの精度以前に、マーケットの性質を見極めることが戦略構築の土台になるのです。
アセット別マーケットエッジランキング
以下は、主要アセットをグループ化し、それぞれの方向性におけるマーケットエッジを簡易的に評価したランキング表です(※表挿入)。
アセット分類 | 買いエッジ | 売りエッジ | 備考 |
---|---|---|---|
米国株指数(S&P500, NASDAQ) | 強い | 弱い | 長期上昇傾向あり |
日本株指数(日経225) | 中程度 | 弱い | ボラティリティ高め |
FX(USDJPY, EURUSD) | 弱い | 弱い | レンジ傾向が強い |
コモディティ(金, 原油) | 中程度 | 中程度 | トレンド性あり |
暗号資産(BTC, ETH) | 強い | 弱い | ボラティリティ極端 |
※この表は筆者の検証結果に基づくものであり、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
長期的な優位性にBETするという考え方
マーケットエッジを活用するということは、過去の傾向に沿って、将来も同様の性質が続くと仮定してポジションを取ることです。
これは、ある意味で「カジノの胴元」に近い考え方です。
胴元は、統計的に有利なゲーム設計を行い、プレイヤーがランダムに行動しても、長期的には必ず利益が残るように設計されています。
トレードも同様に、短期的な勝敗に一喜一憂するのではなく、マーケットの構造的な優位性にBETすることで、長期的に資産を積み上げることが可能になります。
結論:マーケットエッジを活かす戦略設計とは
マーケットに「買いのエッジ」がある場合、ロング戦略のみを構築・運用することが合理的な選択となります。
QuantpleTradingでは、こうしたマーケットの性質を見極めたうえで、順張り・逆張りのエッジを活かしたシンプルなロジックを構築し、堅牢性テストを通じてポートフォリオ化する手法を推奨しています。
マーケットエッジの理解は、戦略構築の出発点です。
次は、実際にどのように戦略の骨組みを作るか=戦略構築方法について学んでいきましょう。
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