為替・株・商品・債券・暗号、全23銘柄をデータで格付け。判明した「期待値2.5倍」の差

あなたが今トレードしている銘柄は、どうやって決まりましたか?

「FXから入ったので、まずはドル円やユーロドルで」「よく見ているトレーダーが、その銘柄を扱っていたから」。多くの人は、こうした身近なきっかけで最初の銘柄を選んでいるはずです。

でも、もし手法を磨くよりずっと手前、「どの銘柄を選ぶか」という時点で、トレードの難易度が天と地ほど変わっているとしたら、どうでしょうか。

そこで今回は、主観やイメージを完全に排除し、「為替・株価指数・コモディティ・債券・暗号資産」の全23銘柄について、10年間の価格データを誰が見ても分かる形で分析しました。

数字という共通のものさしで並べてみると、これまで見えていなかった「戦いやすい戦場」の正体がはっきりと浮かび上がってきます。

私たちが勝負すべきマーケットはどこなのか。おそらく予想を裏切る分析結果を、ここから公開していきます。

本記事の調査対象:全23銘柄一覧
  • 【為替 (FX)】 ユーロドル (EURUSD) / ドル円 (USDJPY) / ユーロ円 (EURJPY) / ポンド円 (GBPJPY) / ユーロポンド (EURGBP) / ポンドドル (GBPUSD)
  • 【株価指数】 ナスダック100 (USA TECH) / ダウ平均 (USA30) / S&P500 (USA500) / 日経225 (JPNIDX) / ユーロ・ストックス50 (EUSIDX) / ドイツDAX (DEUIDX)
  • 【コモディティ】 原油 (LIGHT) / 天然ガス (GAS) / ゴールド (GOLD) / シルバー (SILVER)
  • 【債券】債券米国債 (US BOND) / 英国債 (UK GILT) / ドイツ国債 (GER BUND)
  • 【暗号資産】ビットコイン (BTC) / イーサリアム (ETH) / トロン (TRX)
  • 【その他】 VIX指数
目次

勝ちやすい銘柄の定義:なぜ「シャープレシオ」が重要なのか

本題に入る前に、「勝ちやすい銘柄」とは何か、その定義を揃えておきます。

トレードの経験がある方なら、値動きの激しい銘柄で、エントリーした瞬間に逆行したり、急な乱高下で損切りさせられたりと、判断を振り回されて疲弊した経験があるはずです。つまり、方向性が定まらず、それでいて値動きだけが激しい銘柄ほど、トレードの難易度は高くなります。

逆に言えば、勝ちやすい銘柄とは「価格の動きが安定していて、かつ方向性のエッジ(優位性)が強い銘柄」のことです。私たちが心の奥で望んでいるのは、本当は「穏やかな値動き」で「一方向に進んでくれる」ことではないでしょうか。価格のブレが小さく、それでいて一定の方向へ進む力が強ければ、もっと落ち着いてトレードができるはずです。

トレーディングの理想は、実はとてもシンプルなのです。

そして、その「理想」を数値化したものが、投資の世界で使われる「シャープレシオ」という指標です。計算に必要な「リターン」と「リスク」について、先に少しだけ触れておきます。

対数リターンを使った分析

今回の分析では、リターンの計算に一般的な「前日比(%)」ではなく、「対数リターン(ログリターン)」を用いています。聞き慣れない方もいるかもしれませんが、単純な%計算では数字に「ズレ」が生じてしまうからです。

例えば、10万円の銘柄が前日比で「マイナス10%」になったとします。価格は9万円です。翌日、今度は「プラス10%」になりました。10%下がって10%上がったのだから、元の10万円に戻りそうな気がします。ですが実際には、9万円の10%増なので9万9千円にしかなりません。

このように、単純な%計算ではプラスとマイナスの動きを正しく比較できません。そこで、10年という長期データを公平に評価するために「対数リターン」を採用し、この問題を解消しています。

トレードにおける「リスク」の概念

ここで、「リスク」という言葉の認識も揃えておきましょう。一般的に「リスク=危険なもの」というイメージがありますが、トレードの世界では「価格のブレ幅(標準偏差)」のことを指します。

【図】左:リスク(価格のブレ幅)が小さい銘柄/右:リスク(価格のブレ幅)が大きい銘柄

価格が上に跳ねるのも、下に落ちるのも、その「揺れ」の大きさはすべてリスクです。つまり、リスクが小さい銘柄ほど、私たちのメンタルをかき乱す「予期せぬノイズ」が少ない銘柄と言い換えることができます。

算数でわかる「勝ちやすさ」の計算

この「勝ちやすさ」は、実はとてもシンプルな割り算で比較できます。

リターン(方向性・優位性) ÷ リスク(ブレの大きさ)

例えば、同じ「10」というリターンで、リスクの違う2つの銘柄があった場合、こう比較できます。

  • 銘柄A:リターン 10 ÷ リスク 5(大) = 2.0
  • 銘柄B:リターン 10 ÷ リスク 2(小) = 5.0

同じリターンが得られるなら、リスク(ブレ)は小さいほうがいい。つまりこの場合は、銘柄Bのほうが「圧倒的に有利なマーケット」と言えます。

この計算結果を「シャープレシオ」と呼びます。数字が大きいほど「リスクの割にリターンが効率よく得られる=トレーダーにとって勝ちやすい銘柄」ということです。今回は、この共通のものさしを使って、全23銘柄の優劣をはっきりつけていきます。

全23銘柄:リスク・リターン特性マトリクス

それでは、全23銘柄の「リターン(平均収益)」を縦軸に、「リスク(価格のブレ)」を横軸に配置した、10年間の集大成となる散布図をご覧ください。

【図】全23銘柄のリスク・リターン散布図(縦軸:リターン/横軸:リスク)

グラフの左下は多くの銘柄が密集しているので、まずは中央から右側の「リスクの大きい銘柄」を例に、図の見方を解説します。

中央付近にある原油(左)と天然ガス(右)に注目してください。

【図】原油 / 天然ガスの散布図(拡大)

この2つはリターンがほぼ同じですが、天然ガスのほうが右側(リスク大)に位置しています。つまり同じ利益を狙うにも、天然ガスのほうが「激しい揺さぶりに耐える必要がある」ということです。この記事の定義で言えば、より「勝ちやすい」のは原油のほうです。

次に、右側の暗号資産エリアです。ETHとTRXを比べると、リスクはほぼ同じですが、TRXのほうが高いリターンを出しています。

【図】TRX / ETHの散布図(拡大)

同じリスクを取るなら、より高い収益が見込めるTRXに軍配が上がります。

さらに重要なのが、左下の「0」の地点から右上へ伸びる2本の点線です。

  • 上の線:シャープレシオ 1.0(非常に優秀)
  • 下の線:シャープレシオ 0.5(優秀)

先ほどの原油・天然ガス・ETH・TRXは、いずれも「0.5のライン」を下回っています。しかし、BTC(ビットコイン)だけはこの2本のラインの間に位置しています。つまり、これらハイリスク銘柄の中で、最も投資効率がよく「勝ちやすい」のはBTCだと分かります。

では、多くの銘柄が集中していた「左下」のエリアを拡大して、中身をさらに詳しく見ていきましょう。う。

【図】散布図左下エリアの拡大図

拡大すると、驚きの事実が見えてきました。シャープレシオ0.5のラインをしっかり超えているのは、米国の主要株価指数3種、貴金属(ゴールド・シルバー)、そしてBTCだけだったのです。

こうして俯瞰すると、私たちが普段戦っているマーケットの特性が一目瞭然です。この結果を、さらに詳細な数値で確認するため、「シャープレシオ・総合ランキング」を作成しました。

シャープレシオ・総合ランキング(全23銘柄)

10年間のデータをもとに算出した、銘柄別の「勝ちやすさ」ランキングです。

なお、散布図でリターンが0を下回っていた銘柄(債券、VIX、GBP/USD)については、「ショート(売り)」にエッジがあるものとして、その絶対値を順位に反映しています。

順位銘柄名エッジ方向リターンリスクシャープレシオ
🥇 1GOLD (金)Buy0.110.130.85
🥈 2USA TECH (ナスダック100)Buy0.140.200.68
🥉 3BTC (ビットコイン)Buy0.460.700.68
4USA500 (S&P500)Buy0.100.160.60
5USA30 (ダウ平均)Buy0.080.160.52
6SILVER (銀)Buy0.130.260.52
7TRX (トロン)Buy0.410.880.47
8JPNIDX (日経225)Buy0.080.190.43
9UK GILT (英国債)Sell-0.040.100.41
10DEUIDX (ドイツDAX)Buy0.070.170.38
11GER BUND (ドイツ国債)Sell-0.020.070.36
12EURJPYBuy0.030.080.35
13EUSIDX (ユーロ50)Buy0.060.190.29
14USDJPYBuy0.020.080.26
15ETH (イーサリアム)Buy0.220.880.25
16US BOND (米国債)Sell-0.020.100.24
17EURGBPBuy0.010.070.21
18VIX (恐怖指数)Sell-0.140.740.19
19GBPJPYBuy0.010.100.14
20EURUSDBuy0.010.070.10
21GBPUSDSell-0.010.080.09
22LIGHT (原油)Buy0.030.410.08
23GAS (天然ガス)Buy0.040.530.07
※ データの取り扱いについて:調査期間は原則として直近10年間ですが、暗号資産や一部の債券など、ヒストリカルデータが10年に満たない銘柄があったため、公平に比較できるよう「年率換算」した数値で比較しています。また、小数第3位以下を四捨五入しています。

ランキングを見て、どう感じられたでしょうか。

ここでお伝えしたいのは、「なぜゴールドが上がったのか」「なぜ米国株が強いのか」といった理由の後付けではありません。それは結果論に過ぎないからです。

重要なのは、「過去10年、これらの銘柄には、この数値どおりの傾向(優位性)が明確に存在した」という事実です。

ゴールドが1位で、米国株指数が上位を独占し、逆にエネルギー銘柄や一部の為替ペアが極めて効率の悪い数字を出している。だからゴールドや米国株指数を取引し、エネルギーや為替は取引しない。トレーディングの本質は、いつもシンプルです。

これまで優位性が証明されてきた銘柄の傾向を利用し、「期待値の高い戦場」で淡々と戦略を構築していく。それが、データにもとづいたトレードの真髄です。

カテゴリ別に見るリスク・リターンの特性

単独銘柄のランキングから一歩踏み込んで、今度はマーケットのカテゴリ単位でランキングを作成しました。個別の銘柄選び以上に、実は「どのジャンルを主戦場に選ぶか」が勝敗を大きく左右します。

カテゴリの分類
  • 【為替 (FX)】 ユーロドル (EURUSD) / ドル円 (USDJPY) / ユーロ円 (EURJPY) / ポンド円 (GBPJPY) / ユーロポンド (EURGBP) / ポンドドル (GBPUSD)
  • 【株価指数】 ナスダック100 (USA TECH) / ダウ平均 (USA30) / S&P500 (USA500) / 日経225 (JPNIDX) / ユーロ・ストックス50 (EUSIDX) / ドイツDAX (DEUIDX)
  • 【コモディティ】 原油 (LIGHT) / 天然ガス (GAS) / ゴールド (GOLD) / シルバー (SILVER)
  • 【債券】債券米国債 (US BOND) / 英国債 (UK GILT) / ドイツ国債 (GER BUND)
  • 【暗号資産】ビットコイン (BTC) / イーサリアム (ETH) / トロン (TRX)
  • 【その他】 VIX指数
順位カテゴリシャープレシオ(平均)
🥇 1株価指数 (Stock)0.48
🥈 2暗号資産 (Crypto)0.46
🥉 3コモディティ (Commodity)0.38
4債券 (Bond)0.38
5為替 (FX)0.19
6その他 (VIX)0.19
小数第3位以下を四捨五入しています。

例えば、トレーダーに人気の為替(FX)と、最も効率のよい株価指数を比べてみてください。データが示す期待値には、2.5倍以上の開きがあります。

もしあなたが「なんとなく馴染みがあるから」という理由だけで為替を選んでいるなら、それは自ら進んで「2.5倍難しいゲーム」に挑んでいるのと同じです。

好みではなく、データが証明した「勝ちやすい戦場」を冷静に選ぶ。この「入り口の判断」こそが、トレーディングの成果を大きく左右する、最も重要な要素になります。

まとめ:期待値の上に、戦略を築く

10年間の膨大なデータから導き出した答えは、とてもシンプルでした。

相場の世界に「絶対」はありません。しかし「どこが勝ちやすい戦場か」という期待値の差は、数字としてはっきり示すことができます。

私たちは、特定の銘柄で勝つために相場にいるのではありません。勝ち負けを繰り返しながらも、「期待値」によって資産を拡大させるためにトレードをしているはずです。それならば、データにもとづいた「有利な戦場」で淡々と戦略を構築していくのが、最も合理的でシンプルな選択ではないでしょうか。

今回の分析で、「有利な戦場」を選ぶ重要性は十分にお伝えできたかと思います。

ただし、期待値の高い銘柄選びは、トレーディングのスタート地点にすぎません。その有利なフィールドで、実際にどうトレードへ落とし込んでいくのか。

具体的な戦略の構築手順を、第一歩から順を追ってまとめています。ぜひ続けて読んでみてください。

トレーディング戦略の構築手順①(マーケットエッジを理解する)へ

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