投資を【確信】に変えるデータ分析|S&P500が1日ごとに生む価値を徹底解剖

トレード経験者ならば、画面を埋め尽くすインジケーターや無数に引かれたラインを見て、「聖杯」を探した経験が一度はあるはずです。金利の動向や政治ニュース、それっぽい専門家やアナリストの予測。これらを完璧に整理し、未来を読み解くことこそが正解だと信じて、多くの時間を費やしてしまいがちです。

そして私たちはいつの間にか、「複雑なものほど価値がある」という思い込みから抜け出せなくなってしまいます。

だからこそ、当サイトでは未来を当てるための「予測」を一切行いません。 大切にしているのは、主観や感情が入り込む隙のない、過去のデータの中にのみ存在する「傾向」を味方につけるという、極めてシンプルな考え方です。

「難しいことを、難しく考える」のを一度やめてみる。 その先にある、相場の本質ともいえる「統計的な偏り」について、ここから具体的にお話ししていきたいと思います。

目次

マーケットとコイン投げは何が違うか

相場が明日「上がるか下がるか」を考えるとき、それはコインを投げて「表が出るか裏が出るか」を当てるゲームによく似ています。

もし、その確率が完全に50%ずつであれば、それはただのギャンブルです。どれだけチャートと向き合っても、長期的には手数料の分だけ資産は削られていくでしょう。しかし、もしそのコインに「細工」がされていて、表が出る確率が54%だったとしたらどうでしょうか。

実はこれと同じことが、マーケットでも起きているのです。

投資の王道とも言われる株価指数「S&P500」を紐解いていくと、まさにこのコイン投げのような「細工」の正体が見えてきます。

多くの方は、普段からチャートで「ローソク足」を見ていると思いますが、このローソク足は大きく分けると陽線と陰線の2つしかありません。では、過去14年間(2012年~2025年)の約4,000日において、陽線と陰線はそれぞれ何回出現したのか。

実際の検証結果をご覧ください。

判定回数確率
陽線2,212回54.3%
陰線1,856回45.6%
同値6回0.1%

S&P500がその日に上昇した確率は「54.3%」。 この数字を見て、「たったそれだけの差か」と思いましたか?

もしそう感じたのであれば、カジノの胴元がなぜビジネスとして絶対に負けないのかを思い出してみてください。

世界中のカジノホテルが豪華なビルを建て続けられる理由は、まさにこの数パーセントの偏りを味方につけているからです。例えば、バカラやブラックジャックにおいて胴元側が持っている有利さは、実はわずか1〜2%程度に過ぎません。そのたった数パーセントの壁があるだけで、胴元側には富が積み上がる仕組みになっています。

相場の本質は、誰でも簡単に見つけられるデータの偏りの中にあります。54.3%もの確率で表が出るコインがあるのなら、どちらに賭けるべきか。「優位性がある方に賭け続ける」ことこそが、統計学的に見て最も合理的な選択なのです。

過去14年間の「再現性」を検証する

この「54.3%」という数字が、短期的な偏りではなく、いかに長期にわたって安定しているかをさらに深掘りしてみます。

特定の年だけが極端に良かった結果ではないことを確かめるため、過去14年間の年度別の推移を整理しました。

Year陽線陰線
201252.42%47.58%
201360.81%38.83%
201457.59%42.41%
201547.41%52.59%
201650.78%48.84%
201761.09%38.91%
201853.20%46.80%
201954.81%44.55%
202056.41%43.27%
202157.23%42.77%
202246.45%53.55%
202352.90%47.10%
202457.19%42.81%
202552.24%47.76%
※同値レートは除外

データを一覧にしてみると、過去14年間のうち、12年間は陽線の発生確率が50%を超えており、陰線を上回っていたことが分かります。

注目したいのは、歴史的な下落相場となった2022年ですら、陰線の確率は53.55%に留まっているという点です。一方で、強い上昇相場だった2013年や2017年には陽線になる確率は60%を超えることもあります。

つまり、この「陽線が出やすい」という偏りは、一過性の現象などではなく、マーケットの性質であると言えます。

ここまで安定した優位性があるのであれば、戦略は非常にシンプルになります。しかし、ここで冷静にもう一つの視点を加える必要があります。それが「値幅」の問題です。

勝率だけでは見えない「値幅」の要素

ここで、もう一つの重要な視点を加えていきます。

トレードの良し悪しを判断するには、勝率だけでなく「値幅」の要素も欠かせません。どれだけ勝率が高くても、一回の利益が小さく、反対に損失が大きすぎるのであれば、トータルの資産は増えていかないからです。

「陽線と陰線の値幅の差はどのくらいあるのか?」

その実態を確かめるため、今度は陽線と陰線、それぞれの平均値幅を比較してみます。

検証の結果、意外な事実が見えてきました。

グラフを見るとわかる通り、平均的な「値幅」の大きさは、上昇時よりも下落時の方が大きいことがわかります。

正直、私自身も、これだけ長期的な上昇トレンドにあるS&P500なら、陽線の値幅のほうが大きいのではないかと考えていたのですが、事実は逆でした。このように検証すると思い込みがいかに危険か実感できます。

ここまでを整理すると、現在の状況はこうなります。

  • 出現回数:陽線のほうが多い(54.3%)
  • 値幅:陰線のほうが大きい(-19.38 points)

陽線のほうが数は多く、値幅は陰線のほうが大きい。一見すると、相殺されてしまうようにも感じられますが、ここから先の計算は非常にシンプルです。

「上昇する確率 × 上昇幅」から「下落する確率 × 下落幅」を引くことで、1日あたり平均してどれだけの利益(または損失)が見込めるのかが計算できます。今回のデータを当てはめると、結果は以下のようになりました。

【過去14年間のS&P500 1日あたりの期待値】
(54.3%×18.47)ー(45.7%×19.38)=1.17
※数値はわかりやすく概算にしています。

最終的な計算結果は 「+1.17」

これはつまり、統計学的に見れば、「ただ毎日S&P500を保有しているだけで、1日あたり平均1.17$ずつ資産が増えていく計算になる」ということです。これをトレーディングの世界では「期待値」と言います。

もちろん、これはあくまで過去14年間の平均であり、明日から必ずこうなることを保証するものではありません。しかし、これほど明確な「プラスの偏り」を目の当たりにして、それでも「売り」から入ったり、闇雲に予想に頼ったりする必要があるでしょうか?

トレーディングにおいて私たちがやるべきことは、予想を当てることではなく、この過去の傾向(統計的に証明されたマーケットの偏り)に、身を委ねることです。

それこそが、長期にわたって資産を築くための、最もシンプルで強力な答えなのです。

最後に:データはあなたの「盾」になる

今回の検証を通じて、S&P500という市場に隠された「勝率」と「値幅」の真実を紐解いてきました。

投資の世界には、常に不安がつきまといます。暴落のニュースに怯えたり、自分の判断が正しいのか分からなくなったりすることもあると思います。しかし、そんな時にあなたを支えてくれるのは、誰かの根拠のない予想ではなく、自分自身の目で確かめた「客観的なデータ」です。

  • 毎日積み重なっていく「+1.17$」の期待値
  • 14年中12年が陽線優位という圧倒的な再現性
  • 値幅の差を超える、上昇回数の多さ

これらの事実は、複雑に見える相場の中でも、あなたが冷静な判断をするのにきっと役立ってくれるはずです。

さて、今回はS&P500という特定の市場を深掘りしましたが、実はここにはさらに深い「トレーディングの真実」が隠されています。

それは、「努力や技術以前に、銘柄選びの時点で難易度が天と地ほど違う」という事実です。

そこで次回は、代表的な株価指数、為替、コモディティ、債券、クリプトなど様々なアセットにおいて、どのマーケットを主戦場にすべきか。客観的なデータを用いて、紹介したいと思いますので、ぜひ読んでみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次